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研究紹介

第一グループ研究紹介

微視的構造制御による複合化材料の高機能発現とその展開

1. 研究目的

ナノ繊維・粒子の最適制御技術を基盤とする新規複合材料機能の開発に関する拠点形成の一環として,本テーマは,複合材料の高機能発現(高強度化,高電磁気特性化など)を微視的な構造制御によって実現し,さらに複合材料の実用化に向けた種々の展開をはかる.その目的のため,本テーマにおける研究分野の構成は,合成化学,微粒子工学,機械工学および物性化学の複数の分野を含むものとなる.本センターでは,すでに種々のセラミックス系コンポジット(Al2O3,TiN,ZrO2など)の高圧下における合成により,従来得られなかった高強度特性を有するコンポジットの作製とその評価を行った[1-3].さらに,B4C/CNF-Al系コンポジットのパルス通電加圧法による合成同時焼結を行い,高温(約1600℃)において高い曲げ強度(σb 〜 940 MPa)に達する材料の開発も行い[4],さらなる展開を検討している.本研究では,本支援事業の他テーマとも分野横断的に有機的に連携することにより,材料合成およびその複合化,微視的構造の制御(材料形態,分散性,配向などのナノレベル制御)とその評価,機能性発現の検討と物性解析,および実用化を見据えた応用,といった一連の研究の流れを確立し,本研究における合成化学的および材料科学的な視点から拠点形成の一翼を担う.

2. 主な研究成果

微視的構造制御による複合化材料の高機能発現の一環として,ZrO2(Y2O3)-Al2O3系固溶体に着目した.従来,ゾル-ゲル法により調製したZrO2(Y2O3)-25mol%Al2O3 固溶体粉体をパルス通電加圧焼結(PECPS, スパークプラズマ焼結 SPS)して作製したセラミックスは、優れた機械的特性を示すことが知られていた.そこで,本研究ではさらに低コストの粉体調製法である中和共沈法を用いてZrO2(Y2O3)-Al2O3系固溶体粉体を調製し,1) この系における安定化材の最適な添加量, 2) 粒子内組成の均質性や粒子径の分布の改善,3) 最適な焼結条件の調査という観点から研究を行った.その結果、ゾル-ゲル法を用いなくても、靭性値 KIC≥ 15 MPa·m1/2と同時に強度σb ≥1 GPa に達するセラミックスが作製可能であることを見出した[5].このセラミックスは今後このような特性を活かした自動車部品等に使用されることが期待される.さらに,メカニカルミリングとSPSによる金属/セラミック複合材料の合成や熱電変換材料の候補となるセラミックス材料の単結晶育成を行い,詳細な評価を行う予定である.


図:中和沈殿法によって得られたZrO2(Y2O3)-Al2O3系固溶体粉体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真.数~10 nm程度の微粒子粉体からなることがわかる.(a), (b)では組成の偏りがほとんど見られず,均一な微粒子粉体が得られている.この粉体を元に,パルス通電加圧法による焼結を行い,高強度セラミックスを得る.

3. 主な論文

[1] K. Hirota, M. Obata, M. Kato, H. Taguchi, Fabrication of full-density Mg-Ferrite/Fe-Ni permalloy nanocomposites with a high-saturation magnetization density of 1 T, Int. J. Appl. Technol. online, Vol.6, pp.1-13 (2011).

[2] T. Waki, S. Terazawa, Y. Tabata, Y. Murase, M. Kato, K. Hirota, S. Ikeda, H. Kobayashi, K. Sato, K. Kindo, H. Nakamura, HIP synthesis of η-carbide-type nitrides Fe3W3N and Fe6W6N and their magnetic properties, J. Alloy. Compd., Vol. 506, pp. 9451-9455

[3] M. Kato, Y. Nogi, S. Hongo, K. Hirota, Synthesis and magnetic properties of Cu oxides with low-dimensional structure, J. Phys.: Conference Series, Vol. 344, pp. 012010/1-6.

[4] K. Hirota, Y. Nakayama, S. Nakane, M. Kato, T. Nishimura, The study on carbon nanofiber (CNF)-dispersed B4C composites, Int. J. Appl. Ceram. Technol., Vol. 6, pp.607-616(2009).

[5] K. Yamamoto, M. Kato, K. Hirota, H. Taguchi, H. Kimura, T. Kunisada, Y. Kageyama, H. Morita, Fabrication of High Strength and Toughness Ceramics Using Pulsed Electric-Current Pressure Sintering of ZrO2(Y2O3)-Al2O3 Solid Solution Powders Prepared by the Neutralization Co-precipitation Method, J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy, Vol. 60, pp. 428-435.

グループリーダー自己紹介

加藤 将樹
理工学研究科 教授

プロフィールと連絡先
本来の専門分野は,遷移金属化合物の磁性や超伝導などの固体化学ならびに電子物性評価といった基礎研究です.同じグループの廣田教授との出会いから,コンポジット材料開発に携わり高強度・高じん性のセラミックス系複合材料を共同研究しています.本センターの異なる分野の方々との交流の重要性を改めて感じています.本プロジェクト研究ではケミカルな組織制御法を発揮して,テーマ研究を進めたいと考えています.ご興味のある方は,どうぞお気軽にご連絡下さい.

〒610-0321 京都府京田辺市多々羅都谷1-3
TEL/FAX 0774-65-6686
E-mail makato@mail.dosh
研究テーマ紹介

パルス通電加圧焼結によるTiO2/TIN/CNF系コンポジットの作製
高強度•強靭性を有するZrO2(Y2O3) -Al2O3系セラミックスの作製
金属/炭素繊維系高熱伝導ハイブリッド材の作製
磁性ナノコンポジット用(Fe,Mn)Al2O4系スピネル型フェライトの合成と物性評価
強い電子相関を示す遷移金属化合物の合成と物性
低次元構造を有する磁性体における元素置換による化学的圧力効果
金属−絶縁体転移を示すルテニウム酸化物の構造制御と物性評価
層状コバルト酸化物における熱電変換特性と磁気フラストレーション

研究室の声
2月は修士論文や卒業論文など,年間で最も研究室が慌ただしくなる時期です.もっと早く実験しておけば,などの声が聞こえてきますが,今さら愚痴を言っても始まりません.笑顔で卒業式を迎えられるよう,皆さん頑張りましょう

当グループを構成する各研究室のホームページ
宮本・藤原研究室:
http://se.doshisha.ac.jp/subject/mechanical/labo/mechanical01.html
廣田・加藤研究室:
http://se.doshisha.ac.jp/subject/biochemistry/labo/biochemistry03.html

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