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研究紹介

第四グループ研究紹介

ナノ繊維・粒子を分散性制御した熱可塑性樹脂複合材料射出成形技術の研究

1. 研究目的

熱可塑性樹脂複合材料は成形サイクルが短く,かつリサイクル性に優れるため,量産自動車への利用拡大が期待されている。一方で量産プロセスである射出成形により作られ成形品は,成形中に強化ファイバーの折損が発生し,十分な強度が得られていないのが現状である。複合材料の強度は繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)に大きく依存する。現在多く用いられている炭素繊維,ガラス繊維においては,射出成形の可塑化工程における繊維折損を抑えるスクリュを開発し,残存繊維長:~6mmでアスペクト比:~500を達成している.アスペクト比の桁数を上げて,更なる強化効率の改善を図るためには,カーボンナノチューブなどの繊維径がナノレベルの繊維を用いる必要がある。しかしながら,これらのナノサイズの添加材は,ファンデルワールス力により凝集し,分散させることが極めて難しい。成形品における凝集体は材料欠陥となり,強度を低下させる要因となる。そこで,ナノ繊維の分散性を改善させつつ,繊維折損を生じさせないプロセスを確立することで,アスペクト比で2500以上を得ることを目標とする。具体的には,二軸押出機におけるコンパウンドプロセスから射出成形までの一連の流れにおいて,繊維折損が生じにくい低せん断応力で効率的に分散を促進させるスクリュ形状等をシミュレーションと実験の両面より検討していく。

2. 主な研究成果

本年度はナノ分散を促進させるための分散パラメータについての基礎研究を行った。具体的にはナノ粒子を含むペレットを溶融させた後,細管を高速流動させることで分散を促進させた。流動速度と流路長を変えることで,せん断力,ひずみエネルギーを変化させた。この基礎実験より,ナノクレイの分散は,ひずみエネルギーに大きく支配されることを見出した[1]。この基礎研究を元に,カーボンナノチューブの分散を促進させるスクリュセグメントの開発を行い,より少量のカーボンナノチューブの添加で,プラスチックに導電性を付与することが可能となった。射出成形においては,可塑化部と混練を分けたスクリュを考案し,開発したスクリュを用いることで,分散性と長繊維化を両立することが可能となった[2]。またナノ粒子と,従来の強化繊維を組み合わせることで,より強度の高い射出成形品が得られることを実証した[3]。

図1
3. 主な論文

[1] 荒尾与史彦,大利知之,田中達也, 細管高速流動を利用したナノクレイの剥離分散に関する研究, 日本機械学会A編,Vol. 79, 1239-1251, 2013.

[2] Akira Inoue, Kazuya Morita, Tatsuya Tanaka, Yoshihiko Arao, Yasutake Sawada. Effect of screw designs on fiber breakage and dispersion of GFRTP in injection molding plasticization, Journal of Composite Materials (in press)

[3] Yoshihiko Arao, Syuji Yumitori, Hirofumi Suzuki, Tatsuya Tanaka, Kazuto Tanaka, Tsutao Katayama. Mechanical properties of injection-molded carbon fiber/polypropylene composites hybridized with nanofillers. Composites Part A, Vol. 55, 19-26, 2013.

グループリーダー自己紹介

田中 達也
理工学研究科 教授
(研究センター長)

プロフィールと連絡先
1985年3月 同志社大学 工学研究科機械工学専攻修了
1985年4月 株式会社神戸製鋼所 入社
2002年 同志社大学 博士(工学)
2006年 同志社大学理工学部 教授

プラスチック,金属など材料全般の成形加工に関する研究を行っております。

〒610-0321
TEL/FAX 0774-65-6465
E-mail tatanaka@mail.doshisha.ac.jp
研究テーマ紹介

本研究室では,樹脂系複合材料の加工のみならず,金属系材料の加工に関する研究にも取り組んでいます。
・天然ゴム/扁平状セルロース複合材料の機能性向上に関する研究
・天然繊維強化複合材料の強度向上に関する研究
・炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料によるCVTベルト成形技術の研究
・環境調和型熱可塑性樹脂複合材料のトライボロジ―的特性に関する研究
・マルチスケール解析を用いたDual Phase型高張力鋼板の基礎研究
・半凝固軽金属微細化材料による超薄肉箱成形の研究
・6 軸連続ECAP 加工による半凝固軽合金材料の高靭性化の研究
・半凝固射出成形機の試作と成形条件の最適化
・真空断熱ボトルの成形加工と構造設計,保温機能に関する研究
・高張力鋼板の圧壊特性の把握と最適設計技術に関する研究

研究室の声

外部企業との共同研究が多いのが特徴です。責任ある仕事を任せられるのでやりがいがあります。また国際発表に行かせてもらえる機会が多く,先生より国際会議の情報がじゃんじゃん送られてきます。英語での発表はプレッシャーがかかりますが,自分の勉強になるとともに,海外での滞在を大いに楽しんでいます。

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